1991年の創業から2014年頃までのずいぶん長い間、スタージョイナスの経営スタイルはいわゆる家業だったように思います。私自身の感覚で所謂「かっこいいプロダクト」を選び、販売していました。頼れるのは自身の感性とアンテナだけで、プロダクトありきの販売手法でした。そのため外部環境によって、売れる・売れないが大きく左右されることが少なくありませんでした。
経営スタイルが大きく変わったのは、2014年10月に株式譲渡によりTSIホールディングスの子会社になってからでした。同社の経営企画室にも顔を出すようになり、私の考え方はモノありきのプロダクト思考から、顧客ありきのマーケティング思考に変わっていきました。「かっこいいプロダクトは売れる」という憶測は、「かっこいいの定義は何か」「かっこいいプロダクトが売れる根拠は何か」という問いに変わりました。どんな商品が、どんな見せ方や売り方で顧客に求められているか。新しい知識を吸収し、試行錯誤を繰り返す中で、定量・定性データを踏まえた適切なKGIおよびKPIの設計ができるようになり、目の前に広がる景色も大きく変わりました。
2016年頃から「すごい会議」を導入して、会議体の仕組みやオペレーションを大きく改善しました。すごい会議とは、1975年米国マネジメントアソシエーツ社のハワード・ゴールドマンらによって開発された会議手法です。目標と期限の共有、役割分担、問いの設計と解決策の提案など、問題解決に必要とされるシステマティックなアプローチを全社レベルで習得できます。これにより、経営中枢メンバーから現場のスタッフまで、各々が意思決定し、適切に課題と向き合えるようになりました。
私たちは売上目標を達成するために、週単位で予算や販管費を分解し、次のアクションと期限を明確化します。全社的なマーケティング思考とコーチングのおかげで、トップダウンおよびボトムアップでの情報伝達の精度が高まり、得たい成果に対して最も効果的な施策を打ち出せる自負があります。コロナ禍以前より不況と言われていたアパレル業界において、右肩上がりの成績を維持できるのは、会社全体で高い思考の技術を有しているからだと考えています。
2020年、コロナ禍の影響でインバウンド需要が大幅に縮小し、私たちの業績にも大きなダメージを与えました。過去数年間、私たちは増収増益を記録してきましたが、この年は残念ながら増収減益になりました。もし反省点をあげるなら、2019年にUNDEFEATED店舗を新規7店、BAIT店舗を新規2店と、一気に店舗拡大をしすぎたことです。実店舗ではなくECに資本を集中投下していたら、結果は違ったでしょう。
しかし、言い訳を100万回言ったところで状況が変わるわけではありません。コロナが収束したときに、少しでも有利なポジションに立っていられるよう、できることを考え続け、実践してきました。
コロナ禍における海外・国内の傾向を把握し、これまでインバウンド需要をターゲットにしていたスタイルを、ローカル経済圏を狙うスタイルに大きく転換しました。ローカル経済圏では、お客様にリピートしていただける回数がそのままライフタイムバリューに繋がります。
ファッションやスニーカーを深く愛するお客様にとって、「また来たい」と思ってもらえる場所とは。その問いに対して、店舗単位でプロジェクトをつくり、施策を考え、片っ端から実行しました。現場のスタッフが、対面の接客はもちろんのこと、施策の提案からデータの回収・解析まで懸命に取り組んでくれているので、新しい戦略も功を奏しています。
スタージョイナスでは、研修の中で「Who I am?(私は何者か)」を考えてもらう機会を用意しています。会社が存続するためには、そこで働くメンバーの日々の成長が欠かせません。私自身も、普通の経営者ではなくプロフェッショナルの経営者としてのパフォーマンスを常に意識しています。自分の得意は何か、ありたい姿は何か。プロフェッショナルになる領域を見極めて、それを伸ばすことが個人にとっても会社にとっても大切なことだと考えています。
また、マーケティングやコーチング関連の知識やスキル、定量・定性データの解析、IT・デジタルリテラシーなど、他業界でも転用できるポータビリティスキルの獲得も推奨しています。研修制度、優秀な先輩社員、手を挙げた人に任せる文化。成長するために必要なリソースは社内に多くあります。スタージョイナスで活躍するメンバーの多くは、プロフェッショナルとしての得意分野と、ポータビリティスキルの両方を獲得しています。
これまでは、接客が得意な販売員を採用していました。しかし、時代が変わり、売り方も採用基準も大きく変わりました。今は、デジタルやソーシャルメディアの世界で「好き」を発信し、ファンとのコミュニケーション楽しめるような感度やセンスを持った人に可能性を感じています。また別軸では、商売に興味ある人にも可能性を感じています。仕入から販売、在庫・物流管理まで、一貫してビジネスしたいという人にとって、スタージョイナスは学びながら実践できる理想の職場だと思います。クリエイティブ × KPIで、アパレル業界の未来を作りたいと思える方に出会えるのを楽しみにしています。